連載「AIと『判断が育つ』仕事環境づくり」第2回

この記事でわかること

  • 複数のMacで同じファイルを使うための「母艦」という考え方
  • Syncthing・Obsidian・Eagle・GitHubをどう組み合わせたか
  • 「設定した」と「実際に動いている」は違う、という落とし穴

前回(第1回)は、AIで仕事が速くなったのに、経験が次の案件に活きていない、という話を書きました。今回は、その解決に向けた最初の一歩です。

どのMacを使っても、同じ仕事の続きがしたい

僕は複数のMacを使っています。持ち歩くMacBook Proもあれば、机に置きっぱなしにできるMac miniもあります。

そこで、Mac miniを「仕事の母艦」にしてみようと考えました。

  • 仕事に必要なデータはMac miniに集める
  • MacBookで作業しても、最終的には母艦に戻ってくる
  • 将来、AIが過去の知識や素材を参照するときも、この環境を中心にする

空母と艦載機のようなイメージです。艦載機(MacBook)はあちこち飛び回っても、帰る場所(Mac mini)は一つ、という構成です。

iCloudではなく「Syncthing」を使う

ここで使ったのがSyncthing(シンクシング)です。

用語メモ:Syncthing
複数のパソコン同士で、フォルダの中身を自動で同じ状態に保ってくれる無料ソフト。iCloudやDropboxのようにクラウドを経由せず、端末同士が直接やりとりするのが特徴です。

やりたいことはシンプルです。

Mac mini
   ↕
MacBook Pro
   ↕
別のMacBook

どの端末で作業しても、同じファイルが同期されている状態にする。ここに、メモアプリObsidianの保存フォルダも、画像管理アプリEagleのライブラリも置きます。

最初はMac miniを常に電源オンにしておくイメージでした。ただ、後でバックアップの設定を見直すなかで、「ずっと電源を入れておくこと」と「仕事の中心にすること」は分けて考えるようになります(この話は後半で)。

「これで合ってる?」の連続

Syncthingの設定は、ひとつひとつは難しくありません。

  1. Syncthingをインストールする
  2. Mac同士をお互いに認識させる
  3. 各端末の「Device ID(端末ごとの識別番号)」を確認する
  4. 共有するフォルダを決める
  5. Macごとに保存先を指定する
  6. 同期が終わるまで待つ

でも実際は、

「このチェックでいい?」
「このフォルダの場所(パス)で合ってる?」
「この状態なら次へ進んでいい?」

の連続でした。

さらに、古いIntel製のMacでは、ダウンロードしたSyncthingがmacOSの安全機能(Gatekeeper)に止められることもありました。許可を出して起動し、設定画面が立ち上がって、ようやく端末の追加に進める。こういう小さな壁がいくつもありました。

Obsidianで出てきた「全部同期しちゃダメ」問題

用語メモ:Obsidian と Vault
Obsidianは、Markdown(シンプルな書式のテキスト)でメモを書くアプリです。メモが入っているフォルダを「Vault(保管庫)」と呼びます。

ObsidianのVaultは、GitHubでも管理したいと考えていました。

用語メモ:GitHub と Git
Gitは、ファイルの「いつ・何を変えたか」を記録する仕組み。GitHubは、その記録をネット上に保存・共有できるサービスです。変更を記録することを「commit(コミット)」、GitHubへ送ることを「push(プッシュ)」と呼びます。

ここで一つ問題があります。Gitは、フォルダの中に.gitという「管理用の隠しフォルダ」をつくります。これをSyncthingで同期してしまうと、複数のMacが同じ管理情報を同時にいじることになり、記録が壊れる原因になります。

そこで、こう分けました。

  • Obsidianのメモ本文 → Syncthingで同期する
  • .git(Gitの管理情報) → 同期しない
  • GitHubへのバックアップや履歴管理は、母艦のMac miniだけが担当する

さらに、Obsidianのworkspace.json(「そのMacで今どのタブを開いているか」といった端末ごとの情報)もGitの管理から外しました。

全部同期すればいいわけではない。

みんなで共有するものと、端末ごとに持つものを分ける。

この考え方は、後の「Knowledge(知識)」の設計にもつながっていきます。

「設定した」と「動いている」は違った

AIが古い場所を見ていた

Obsidianの保存先は、iCloudからSyncthingのフォルダ(~/Syncthing/Obsidian/taisan)に引っ越しました。

ところが後で確認すると、ClaudeからObsidianを読むための接続が、古いiCloud側を見たままでした。

用語メモ:MCP
AIが外部のアプリやデータを読み書きするための「接続口」のようなもの。ここでは、ClaudeがObsidianのメモを読むための接続設定を指します。

メモを引っ越しても、AIの参照先まで自動で変わるわけではありません。設定の場所を書き換え、Claudeを再起動して、新しいKnowledge/フォルダが読めることを確認しました。

自動バックアップが実は動いていなかった

GitHubへの自動バックアップにも、同じような落とし穴がありました。

手動のテストでは成功していたのに、翌日つくったメモがGitHubに届いていない。最初は「新しいファイルを拾わないつくりなのか?」と疑いました。でも調べると、新規ファイルもちゃんと拾うつくりでした。

問題は、スクリプトそのものが実行されていなかったことです。

設定は「毎日午前3時に1回」。その時間にMac miniの電源が切れていたら、あとから追いかけて実行する設定にはなっていませんでした。

そこで、

  • ログインしたときに1回
  • その後は30分ごとに確認

という設定に変えました。再設定の直後にバックアップが動き、GitHubへの送信まで成功したことを確認できました。30分ごとの継続動作は、これからログで確かめていく段階です。

「一度成功した」で安心せず、普段の使い方でも動いているかを見る。母艦づくりには、そんな地味な確認が欠かせませんでした。

Gitに書き込む役も、一台に決める

もう一つ、別の環境からGitに登録した日本語のファイル名と、Macで登録した名前が、見た目は同じなのにコンピュータ上では別の文字列として扱われる問題が起きました。

19ファイルのうち17ファイルが、Gitの管理情報の上で二重登録されていたのです(実際のファイルが2つに増えたわけではありません)。

ここから、VaultのcommitやpushはMac miniに集めるというルールをよりはっきりさせました。AIがメモを読み書きすることと、複数の環境からGitを書き換えることは分けて考えます。

二重登録の整理や、不要なファイルを管理対象から外す作業は、この時点では「直し方を決めた」段階で、まだ全部は片づいていません。それでも、どこが同期を担当し、どこが履歴を残すのかは、かなりはっきりしました。

画像管理アプリEagleも同期する

用語メモ:Eagle
画像やデザインの参考資料を、タグや色で整理・検索できるアプリ。デザイナーの「参考資料の引き出し」としてよく使われます。

僕の仕事では、画像やデザインの参考資料をたくさん使います。そこでEagleのライブラリをMac miniに置き、SyncthingでMacBookへ同期する構成にしました。追加したIntel製のMacBookでも、約6.79GiB(約7.3GB)のライブラリの同期が始まったところまで確認できています。

ただし、EagleはObsidianのメモとは性質が違います。ライブラリの中には、Eagle自身が管理しているデータがあるからです。そこで次のルールにしました。

  • 同期が「最新」になる前に、別のMacから開かない
  • 複数のMacから同時に編集しない

便利だから何でもリアルタイムで共同編集、ではありません。道具の性質に合わせて使い方を変えることが大切でした。

iPhoneからも素材を放り込みたい(構想)

参考になるデザインを見つけるのは、Macの前にいるときだけではありません。むしろスマホで見つけることのほうが多いくらいです。

そこで、Eagleの自動取り込み機能を使えば、こんな流れがつくれそうだと考えました。

iPhone
 ↓
共有用のInboxフォルダ
 ↓
Mac mini
 ↓
Eagleへ取り込み
 ↓
Syncthing
 ↓
各Mac

これはまだ構想の段階です。Mac同士の同期と、iPhoneからの取り込みは、別々に確認していくことにしました。

こうして見ると、Mac miniは単なるファイル置き場ではありません。いろいろな場所から入ってくる仕事の素材を受け止める場所になっていきます。

母艦をつくりたかった本当の理由

ここまでだと「複数のMacで同じファイルが使えるようになりました」というだけの話です。でも本当にやりたかったのは、その先でした。

AIが仕事を手伝うようになると、

AIがどこを見れば、自分の仕事を理解できるのか

が重要になります。

案件のコード、過去の判断、画像やデザイン資料、進行中の仕事。それぞれの置き場所が決まっていれば、AIにも「ここを見ればいいよ」と言えます。そのための土台が、まず必要だったんだと思います。

そして次に問題になったのが、

「じゃあ、何をどこに置くの?」

でした。

まとめ

  • Mac miniを「母艦」にし、Syncthingで複数のMacを同期した
  • Gitの管理情報や端末ごとの設定は同期しない。共有するものと端末ごとのものを分ける
  • 「設定した」と「動いている」は別物。AIの参照先や自動バックアップは実際に確認が必要
  • 道具の性質(Eagleなど)に合わせて運用ルールを変える
  • 母艦の本当の目的は「AIがどこを見ればいいか」を決めること

次回:第3回「Notion・GitHub・Obsidian・Eagle、結局どこに何を置くのか」