連載「AIと『判断が育つ』仕事環境づくり」第1回
この記事でわかること
- AIで仕事が速くなっても、経験が「次」に活きていないという問題
- 情報は「ない」のではなく「ありすぎて見つからない」という落とし穴
- 残したいのはファイルではなく「判断」だ、という考え方
AIで仕事は速くなった。でも……
僕は仕事でかなりAIを使っています。
文章を書く、企画を考える、Webサイトやデザインをつくる、コードを書く、資料をつくる、調べものをする。ChatGPTも使いますし、Claude Code(AIにプログラムの作業を手伝ってもらうツール)も使います。
以前なら数時間かかっていた仕事が、数十分で終わることもあります。仕事は間違いなく速くなりました。
ただ最近、ひとつ気になることが出てきました。
「AIはどんどん賢くなっている。でも、僕自身の仕事のやり方は、ちゃんと賢くなっているんだろうか?」
良い仕事をしても、その経験が次につながらない
たとえばWebサイトをつくっていると、毎回いろいろな問題が起きます。
- スマホで見たときだけレイアウトが崩れた
- CSS(見た目を決めるファイル)を直したのに、ブラウザに古いデータが残っていて反映されなかった
- WordPressを本番のサーバーに移したら、トップ以外のページが「見つかりません(404)」になった
- 依頼主が自分で更新することを考えると、最初に考えていたつくり方では運用できなかった
そのたびに調べて、AIに相談して、直して、完成させます。その瞬間は「なるほど、次からこうすればいいのか」と思っているんです。
ところが数か月後、別の案件で似た問題が起きると、また一から調べている。
「ChatGPTとの過去の会話にあった気がする」
「Claude Codeで直した気がする」
「GitHubのどこかに記録がある気がする」
「Notionにも何か書いたかもしれない」
でも、どこにあるのか分からない。
情報が「ない」のではなく「ありすぎる」
振り返ってみると、僕の仕事の情報はいろいろな場所に散らばっていました。
| 場所 | 入っているもの |
|---|---|
| Notion | プロジェクト、タスク |
| GitHub | Web制作のコードと変更の履歴 |
| ChatGPT | 企画や相談のやりとり |
| Claude Code | 実装(つくる作業)の過程 |
| Google Drive | 資料 |
| 画像フォルダなど | デザインの参考資料 |
つまり、記録していないわけではありません。むしろ逆で、めちゃくちゃ記録されている。
問題は、
「記録されていること」と「次の仕事で使えること」は、まったく別物
だということでした。
図書館にたとえると分かりやすいかもしれません。本が何万冊あっても、どこに何があるか分からなければ、必要な1冊にたどり着けません。僕の状態は、本棚のない倉庫に本を積み上げていくようなものでした。
全部ひとつにまとめればいい?
最初に考えたのは「一元化」でした。全部Notionに入れる。全部Obsidian(メモアプリ)に入れる。全部AIが検索できるようにする。
でも考えていくうちに、これは違う気がしてきました。
GitHubにコードがあるのには理由があります。Notionがプロジェクト管理に向いているのにも理由があります。画像を管理する場所と文章を書く場所が同じである必要もありません。
大事なのは、
全部を同じ場所に置くことではなく、必要なときにつながること
なんじゃないか。ここから考え方が変わっていきました。
残したいのは「情報」ではなく「経験」
もうひとつ気づいたことがあります。僕が次の仕事へ本当に持っていきたいのは、ファイルそのものではありませんでした。
たとえば、あるWebサイトでCSSを修正したとします。次の案件で欲しいのは、そのCSSファイルではありません。欲しいのは、
- なぜその問題が起きたのか
- 最初の方法では、なぜダメだったのか
- 次に同じことが起きたら、何を確認すればいいのか
という部分です。
料理にたとえるなら、欲しいのは「完成した料理の写真」ではなく「前回しょっぱくなった理由と、次に気をつけるポイント」のほうです。
つまり、
成果物ではなく、その仕事で得た「判断」を残したい。
これが、今回つくった仕組みの出発点になりました。
まずは、仕事の置き場所から考え直す
そこで、いきなりAIの仕組みをつくるのではなく、まず仕事環境そのものを整理することにしました。
- 何をNotionに置くのか
- 何をGitHubに置くのか
- Obsidianには何を残すのか
- 画像やデザイン資料はどうするのか
- 複数のMacから、どうやって同じ環境にアクセスするのか
- そしてAIは、その中で何をするのか
目指したのは、
仕事をするたびに、その経験が次の仕事へ戻ってくる環境
です。とはいえ、この時点ではまだ、そんなにきれいな言葉にはなっていませんでした。
最初にやったのは、Mac miniを仕事の「母艦」にすること。ここから、思った以上に長い設定の旅が始まります。
まとめ
- AIで仕事は速くなったが、その経験が次の案件に活きていなかった
- 情報は「ない」のではなく、あちこちに「ありすぎて」見つからない
- 解決策は一元化ではなく「必要なときにつながる」こと
- 残したいのはファイルではなく、その仕事で得た「判断」

